翼の作成方法について博物館のイベントで見たことを記載します。先に課題を申し上げますと、皮なめしに使用する薬品は取得の難易度や扱いの危険度(発癌リスク等)もあり「永年の保存」を目的とした場合は皮を鞣している専門の業者様に依頼した方が圧倒的に楽です。
ここでは自宅でできる方法で「10年もったら上出来」な方法です。本格的にやりたい方は日本語で書かれていない論文や書籍を取り寄せる必要があるでしょう。私の作成方法で使用する薬品はホウ酸と洗濯用洗剤、ワイドハイターです。ミョウバンを使用しないのは「ミョウバンは皮を痛める」ことや実体験ですがミョウバン鞣しした皮を濡らしたらいとも簡単に割れました。ミョウバンはオススメしません。
作成する前に【感染症】にはお気を付けください。目に見えるものだけ、口に入れるものだけが感染症ではありません。皮膚に傷がなくても感染する病原体もいるようです。見えていなくても俟っていると思ってください。また、作成方法を工夫していくと薬品を扱うこともあるかと思いますが、その取扱い方法や保管方法については十分に注意してください。私は異常気象のオンパレードの環境の中で室内での薬品の扱いが怖いので手を出していません。

こちらで紹介する翼は病理の先生からいただいた翼だけになったサギ類です。これを作った当時は翼を濡らしてから作製はしていなかったのですが、今は埃を舞わせないことと羽を切らないようにするために、全部濡らしてメスをいれています。上の画像は翼を内側からみた方向です。背面になると風切り羽がついているため、うまくメスで切れ込みをいれることができません。
今、このページを見ている人は標本の作り方に興味がある人か、手元にたまたま入手できた生の翼がある人かと思います。後者である方は一度、手羽先を骨が繋がった状態まで食べて、骨と骨がどのように関節しているか観察してください。実際に骨と骨の間にメスを入れる練習をしておくと、作業中に皮に穴を開けたり羽の脱落数を減少させることができます(ハトは羽が抜けやすいです)
翼と骨をすべて分離するために、上腕骨の筋肉と皮の隙間にメスを入れいていきます。皮と筋肉の付き方の感じはスーパーで売っている鶏肉と一緒の感覚です。そのまま、肘にあたる部分まで剥いていきます。


上腕骨を分離できたら、橈骨尺骨(手羽先食べるときに、肉はあるけど骨ばっかりだなと思う部分)の隙間にメスで切れ込みを入れます。切れ込みを入れる理由は橈骨尺骨をその切った穴から取り出すためです。切れ込みの長さは長いと後で縫うのが大変になりますが、あまりにも小さいと骨が出てきません。ほどほどに。
内側の皮を上腕骨を剥く時と同じように剥いたら、外側の皮は風切り羽が骨に沿って直接ついているので、メスを骨に沿って入れていきます。そうするとザグザグといった感触になるかと思います。翼標本を作る前は羽軸が骨に刺さっている(骨との接着面が点)のかと思っていましたが、実際はそうではありません。

皮と分離出来たら橈骨尺骨を手羽先でいうと食べる部分がなく口に入れると刺さる骨から外してください。ここも風切り羽が骨に沿って生えています。食べるときに皮だけ食べているかと思いますが、それは筋肉がないからです。骨から直に羽軸です。まずは、メスで指先まで切れ込みを入れて、ザクザクと骨から羽軸を剝がしていきましょう。

全部の骨が外れたら残った筋肉や脂をとって、私は血がついているのが嫌なので洗剤で洗ってしまいます。冬であれば冷たい水に浸して翼の状態にもよりますが1日くらいは血抜きのために浸します(その後洗剤で洗う)。洗剤で洗った後、ワイドハイター水で半日くらい浸けて水で洗って軽く水気をとってから縫い合わせる作業に移ります。
骨がなくなると翼はフニャフニャになります。なので針金に綿を巻いて縫い合わせます。縫い合わせる前に皮にミョウバンをこれでもか…というくらいまぶして、綿を詰めていきます。(無印良品のコットン使っています)

全部綿を詰めて縫い合わせたら、ドライヤーで乾かした後に翼の位置を固定するために段ボールや発泡スチロールを台にして、虫ピンや針金を使って、形を整えます。イメージとしては昆虫標本を作る時のような(画像検索するとイメージしやすい)。乾燥したように見えても芯まで乾燥していないことがあります。最低でも1か月は乾燥させてください。また、夏場は濡れた芯が温まることによって腐敗します。夏に作業する時は人がいられる室温で乾燥させてください。
ー完ー

【翼標本作製に感じている課題】
・骨を抜くと、細かな羽の位置が狂いやすい
・大型種や水鳥は翼に残った脂の処理が大変
・橈骨尺骨の末端(手首にあたる部分)から上腕骨の骨頭(肩甲骨と関節している部分)に伸びる膜の独特な曲線の再現が難しい
・私が作成しているような骨にした胴体に翼標本をつけると重たくて固定が難しい(下の画像左は腕が軽いので支柱は不要。右は翼がついているので支柱が必須(どうにかこうにかして、支柱1本で全体を支えていますが)。)

